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「アルにもクレマチスにも、それが原因でさんざん迷惑をかけました。象徴の力の使い方も忘れてしまって」
「象徴の力の使い方を忘れるって……そんなことありえるのか?」
「神官長様にも、「ありえない」と言われました。それで学者のスターチスに使い方を教えてもらって、どうにかここまで来られました……もし巫女らしくない、貴族らしくないっておっしゃるなら、私の根幹が抜け落ちているからかもしれません」
嘘を嘘だとわからなくするには、八割は本当の話をして、二割に嘘を混ぜ込むんだと、どっかのゲームで見たような気がする。
少なくともアルとクレマチスに迷惑かけたのも、スターチスのところで象徴の力の勉強をしていたのも本当だから、これで見逃してくれないかなあ……。
そう背中にダラダラと汗をかきながら、都合のいいことを考える。
アスターは笑顔を浮かべたまま、じぃーっと私を見下ろす。相変わらず腹でいろいろ考えている彼は、こちらに手の内を明かす気はなさそうで、思わず肩がすくみそうになるけれど、やがて「はあ……」と溜息を付かれてしまった。
「まーだ、俺には心を開いてはくれてないみたいね」
意外なことを言われてしまったのに、私は目を見開く。
「そ、そんなことは、決して……」
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