偽りの巫女と放蕩貴族の密談

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「いや。君がどうしてそこまで嘘つくのかわかんないけど、なんでかなあと思っただけよ。さっきも言ったけど、神官や巫女になってる人間も、ほとんどは貴族や王族出身。そんな人間ばかりの中で、いったいどれだけ本気で世界を救う気があるのかわかりゃしねえのに、どうして君がそこまでして命をかける気になったのか、気になっただけで」  ああ、そっち?  ますます私は困惑していた。  アスターは、家の家督問題からはじまって、社交界の腹芸ってものをさんざん見てきて嫌気が差したから、家督を継ぐまでの間の自由時間を外遊に費やして、社交界から距離を置いているキャラだ。  だから基本的に綺麗なものとか、信念ってものを全く信じてない節がある。  下心とか、下世話なネタとか、出世欲とかのほうがまだ信じられる人のはずだ。  どうも私が本物か偽物かってことよりも、偽物がわざわざ本物の真似をしている意味がわからないってところに引っかかったみたい。  でもなあ……。私は言葉に困る。  アスターに興味を持たれてしまったら困る。ただでさえアスターは安全牌ではないのだ。フラグを完全に折り切ってない中、下手に彼のフラグは立てられない。万が一アスターにフラグが立ってしまったら、必然的に誰かに闇落ちフラグが立ってしまうし。だからといって、下手に嫌われてしまっても、戦力に不備が出てしまう。  ……仕方がない。ここは下手な嘘をつくよりも、本当のことを話したほうがいいだろう。  私は口を開く。     
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