偽りの巫女と放蕩貴族の密談

7/8
前へ
/914ページ
次へ
 見ている限り、神殿騎士として巫女の護衛しているアルには距離間をずっと詰めているけど、同じく神殿で修行している者同士のクレマチスとはわずかに距離を空けているように見える。  スターチスの場合は師弟関係っつうことまでは見ていてもわかるが、問題は帝国の人間のはずのカルミアへの距離間がややおかしいことだ。リナリアちゃんは初対面だとは言っていたが、そこも果たしてどこまで本当なのやら。まだ信頼されてねえみたいだから、そこまでは口を割ってはくれなさそうだが。  カルミアはカルミアで、リナリアちゃんがふたりいるみたいなおかしなことを言っているし。  リナリアちゃんの言葉を本当とするなら、嘘をついている根幹は、カルミアの言っているもうひとりのリナリアちゃんになる……が。  そのもうひとりの力は、カルミアの言葉を信じるとしたら、どう考えたって象徴の力の範囲を超えている。それはもう神の奇跡ってものであって、もし過去の巫女姫にもそんな力を持った人間が世界浄化の旅に出ていたら、神殿が大々的に神話を生成して触れ回るだろうに、それは聖書の一行にも載っていないし、記録もされていない。  世界浄化の旅は、世界のフィルターの汚物除去だって聞いてきたが、まあ。  これって神殿や王国が教えとして触れ回っているものよりも大事なんじゃないのか?  一抜けたとしたいところではあるが、まあ。     
/914ページ

最初のコメントを投稿しよう!

210人が本棚に入れています
本棚に追加