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「リナリア様……! ご無事でよかったです! おふたりの声が聞こえなくなったので、なにかあったんじゃないかと心配していました」
アスターがようやく水泡を解いて陸に上がると、ぱたぱたとクレマチスが寄ってきてくれたのが申し訳ない。私は目尻を下げてクレマチスに寄る。
「ごめんなさい、心配させるつもりはなかったんです。ただアスターとお話していただけで」
「それなら、別にいいんですが。耳栓を通して話は伺いました。人魚の件は、どうにかなったんですね?」
「はい」
皆には、夜が明けたらすぐ沼から離れれば人魚が攻撃してこないことを伝える。もっとも、この辺りのことは耳栓を通して全部伝わっていたはずだけれど。
そのことを伝えて、また眠りに行こうと部屋に戻ろうとしたとき。
「リナリア様」
また寝ずの番をしようとしていたアルに引き留められて、私はぱっと振り返る。
アルから声をかけられるのは珍しいな。
「どうかした?」
「……本当に、アスターとはなにもなかったか?」
どうにも、アルはアスターに対して警戒心持ってるみたいだしなあ。アスターは言動はあんなんだけれど、一応貴族様だから、遊ぶ相手は選ぶと思うんだけどね……そりゃ、私も警戒してしまったんだけれど。
私はそれにパタパタと手を振る。
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