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「本当になにもないよ……そういえば、象徴の力の使い方をちょっとだけ勉強したかな?」
「……それは、スターチスのところで学んだんではないのか?」
「うーん、使い方を根本的に勘違いしていたのを、修正できたって感じかなあ」
私はそう言いながら、手の中で花を出す。出した花はリナリア。リナリアは自分の記憶をそのまんま花の中に映像として具現化することができたけれど、私はまだ花の中に、ピンボケした写真を具現化させるので精一杯だ。でも、練習すればリナリアと同じようなこともできるかもしれない。
私の見せる花を、アルは眉間に皺を寄せて怪訝な顔をしてみせた。
「リナのそれは、自分の見たり聞いたりしたことをそのまんま具現化するものではなかったのか?」
「ちょっと違うと思う。リナリアの本来の力は、多分自分の想像力を現実に浸食させるものだと思う……でも私が見たことあるリナリアの力はもっとすごかったし、次の祭壇でまた少し力を強くしてもらえるけれど、それに見合うだけの力の使い方を勉強しないといけないと思う」
「……そうか」
アルが少しだけ考え込んだように、コバルトブルーの瞳を曇らせるのに、私は髪を揺らした。
「なにか気になることがあるの?」
「……俺が聞いていたリナの力と、違うみたいだからだ」
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