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巫女姫の使命
私が途方に暮れた顔をしていてもなお、リナリアは凛とした雰囲気を保っている。
たしかゲームの端々に書かれている設定や設定資料集によれば、彼女は元々は王族だけれど、王位継承権放棄するために神殿に入れられたらしい。今は巫女として神殿で祈りを捧げているけれど、姫としての風格はちっとも消えてはいないってわけだ。
でも……これが夢っていうのは、具体的過ぎるような。私は思わずふにりと頬をつねってみるけれど、痛い気がする。寝ぼけているのかもしれないと、もうちょっと強くつねってみるけれど、ヒリヒリするだけだ。
「……観測者、夢だと思いたい気持ちはわかりますけど、痛いだけですので、頬を引っ張るのはおやめください」
私が何度も何度も頬をつねっているのを見兼ねて、リナリアがさらりと言うので、私はようやく手を頬から離す。それにしても……。私は辺りを見回す。ここはゲームのセーブ画面でしか見たことがない場所で、ゲーム本編だと出てきたことは一度もない。
「あの……ここってどこですか? あと、私が観測者っていうのは、一体……?」
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