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お寺のレオ、の件
そう、その日・・・。
天地家の夕飯のおかずは天ぷら、と決めていた。
野菜も切って海老の殻もむいた。あとは衣・・・と戸棚を開け、
ギョッとした。天ぷら粉がない。
おろしも天つゆも準備万端なのに。
今更変更出来ないよ。
「仕方ない。買ってくるか。」
小銭だけの財布をつかんでポケットに押し込み、
すっかり暗くなってしまった道を自転車でこぎ
いつものスーパーを目指した。
会計を済ませ駐輪場に戻ると不意に声をかけられた。
「アノ、ゴメンナサイ。アノ、チョット・・・。」
「ん?・・・えっ?私?」
180センチはあろうか、スラリとした長髪の男性だ。
見上げたその顔は暗がりでも美形だと思われた。
そして、
そして外人だ。本物の外国人だよ。
いや、喋れないよ、無理、無理・・・と心の中で
拒否している私に、たどたどしいが充分通用する日本語で
言葉を続けてきた。
「チカクニ、オテラ・・・オテラ、アリマスカ?」
「お寺?・・・お寺、ハイ、アリマス、ヨォ。」
何で私までたどたどしい喋りになるのか。
「ホントデスカ?ヨカッタ!ヨカッタ、デス!ウレシイ!」
余りの喜びように、こちらまで顔の筋肉が緩む。
「コノミチ、ドッチ、イキマスカ?」
ほらきた。
う~ん、困った。
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