どうも、天地ルミ子です

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どうも、天地ルミ子です

私の名前は、天地ルミ子。 何とも中途半端な名前だ。 昭和生まれの中高年なら、ゾワゾワっとくる響き。 天地真理でもなく、小柳ルミ子でもないからね。 南沙織はどうした?・・・って話だけどね。 最高に地味な名字の佐藤家から天地家へ嫁ぎ30年。 もはや、天地家の生活サイクルは、この私が握っている、 ・・・と言っても過言ではない。 精神も肉体も成長したさ。 否応なしに、ね。 (ま、ここ数年、5ミリ程背は縮んだけど。) 肝も据わったね。 私の辞書からは、年々「驚嘆」という文字が薄れていく。 じーじとばーばは、微妙に呆けがきてる、って感じ。 それなのに、夫婦の会話はちゃんと成り立っているから魔訶不思議。 彼等のプライドを傷つけないように、 うまく通訳してやるのは、結構神経使うんだね、これが。 あと20年もすれば、私も旦那もこうなるのか・・・。 そう思うとちょっと力も抜けるけど、 人生の終わりなんて誰も大差ないんじゃないか、 って感じてる。 そうそう、謀らずも老後を共にしそうな私の旦那・・・、 フツーの会社員で、名は正夫。 読んで字の如く、正しい夫である。 お堅い性格ではないが、女やギャンブルで泣かされた事はない。 でも、どーよ。 その、つまり、男としての魅力ってヤツ。情熱ってヤツ。 あるのか? あったのか? いやいや、 今更見せられてもそれはそれで対応不可にはなるけど。 離婚した友人に愚痴ると、 「何贅沢言ってんの。それが一番じゃないの!」 と一蹴される。 一番? 本当か? 二番か三番で、本当はもっと大事な一番があるんじゃないのか? ・・・無意味な突っ込みをされている正夫よ、 定年まで5年をきったぞ。 天地家には、立派に成人した子供が、 ふたりもいらっしゃるのだが、これがまた 割と頑丈なルミ子さんの心を、 何かとザワつかせる存在なのだ。 とうに子育ては終わった・・・筈だった。 奴らと大人同士の付き合いになり、 孫のひとりもいて・・・の筈だったが、現実は空の彼方だ。 我家の事件簿の重要参考人はこのふたり。 だって、心配は尽きないのだ。 しょうがない。血縁のなせるワザだ。 いつまで執行猶予をつければよいのか・・・ その話はおいおい、という事で。
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