懐かしの

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懐かしの

「はーい皆、席に……着かなくてもいいか今日は」 そう言って当たり前のようにドアから入ってきたその人物は教室を見回した。 この人は誰だったか、名前が思い出せない。しかし、確か高校の時にものすごくお世話になった先生だ。当時から白髪が目立っていたが、今はさらに髪に白い部分が増え、心なしか少しやせたような気がする。 高校を卒業してから八年もたつ。高校を卒業してからも何度か会いに行った気はするが、ここ二、三年連絡をした覚えがない。 「皆、そんなに驚いた顔で僕を見ないでくれ。今日は君たちにどうしても聞きたいことがあって集まってもらいました」 先生がいたずらっ子のようににやりと笑う。 気づけば私は高校の教室の隅っこで横になりながら本を読んでいた。さっきまで何をしていたか思い出せないが、急に瞬間移動したかのように懐かしい場所に当たり前にいる自分に驚いた。 記憶の中で教室というものは机が規則的に並んだ閉鎖的な場所だった気がするが、ここは机や椅子は前に押し固められ乱雑に置かれている。 見回すと教室の中にはあらゆる年代の見知らぬ人物たちが数名、パソコンをしたりお菓子を食べたりと思い思いに過ごしているようだ。
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