手を繋ごう。

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公園のベンチで、お母さんとのんびりした時を過ごす。 「良い天気だね……」 今日は、病気の症状は控えめらしい。 会話が出来る。 「お母さん……どうして、お母さんは頑張れたの?」 私は、ふと思ったことを口にした。 専業主婦だったお母さん。 お父さんが亡くなってから、財産とか、お父さんの持っていた権力とか、威光とか…… それこそ、私を残して全部失った、お母さん。 お母さんは、私を捨てようと思っただろうか? 自身も、『終わろう』としたのだろうか……? 「優子、あんたが居たからだよ。」 お母さんは、ハッキリと私の目を見て言った。 「大事な一人娘。お父さんとの愛の結晶。そんなあんたを遺して逝けない。私が不幸なら、せめてあんたを幸せにしてやろう……そう思ったんだ。もう、母さんの意地だよ。」 そのお母さんの顔は、私が今までで見たこともない、柔らかな笑顔だった。 「迷惑ばっかりかけて、ごめんね……。」 柔らかなその表情のまま、お母さんは涙をこぼした。 そんなお母さんに、私は何を言ったらいいのか分からなくて。 「ホントよ。お母さんなんて……大っ嫌い。」 精一杯強がろうと、笑顔で嘘をついた。 愛しています。 愛してくれて、ありがとう。 これからも、一緒にいるから。 そんな思いを一生懸命に詰め込んだ、優しい嘘を。
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