眠りの前に

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十万人? 二十万人? いや、もっと? いつも、ドームは子どもたちの笑い声に包まれていた。 ロイドは彼らの子守り役であり、旅立った人類の残した、わずかの良心であり、人工の知性と機械のかたまりである。 ロイドはロボット。 アンドロイドのロイド。 子どもたちを最後まで見取るために残された。 サリエルは天使のよう。 シグマは機械いじりが好き。 ロイドを分解したくて、しかたない。 スージーは甘いお菓子が大好き。 お菓子は、全員が好き。 みんなの誕生日には、ロイドがホールのケーキを手作りする。 セーバーは責任感が強い。 みんなのリーダー。 ソニアは計算が得意。 なんでも、すぐに暗算できる。 でも、みんな、同じ顔。 七百年前に、感染性の病気で、一人を残して、みんな死んでしまったから。 そのときから、みんな、同じ顔。 最後に残ったアルフレッドの体組織から、たくさんの幹細胞を培養し、クローンを作った。 これでいい。ずっと、ここは、子どもたちの笑い声のたえない楽園のままだと、ロイドは思っていた。 太陽が燃えつきる、その瞬間まで。 しかし、ロイドは決して生物学の研究者ではないし、きっと、クローン再生の手順が完ぺきではなかったのだろう。     
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