きっかけ

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それはある日の昼下がり。 「なあ、かあさん、物置でこんなものを見つけた」 「はいはい、なんだい?」 廊下から居間を覗くおじいさんに、おばあさんが顔をあげる。 「これだよ、これ」 「おや、そんなものがあったんだ」 手にしたものをパタパタとさせるおじいさんに、おばあさんは驚きの声をあげた。 おじいさんは、そうなんだよ、とうなづくと、思案顔になった。 「なあ、どうしようか」 「どうって、捨てるしかないだろう?」 「いや、でも、もったいない」 「はあ?何を言い出すの?」 そう言って笑い飛ばすおばあさんとは対照的に、おじいさんの顔は真剣だ。 「ああ、そうだ、それなら」 ひらめいた、と語る声がしたかと思うと、しばらく立って考えていたおじいさんは、大股で居間を横切る。 そして、部屋のすみに置かれたパソコンの前でドカっとあぐらをかくと、最近覚えたパソコンの腕前を発揮する。 しばらくして、おじいさんはうなづいた。横から覗き込んだおばあさんは、首をかしげていたけれど。 画面にはこんな文言がうかんでいた。 「第一回花火大会のお知らせ」 と。 そうして、夏がはじまる。
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