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「てめえら、食い逃げの常習犯だろ?」
酒を飲んでいた男が云った。一度も櫛を入れたことのなさそうなボサボサの短髪がまだ、少年ぽさの残る顔立ちに不思議と似合っていた。だが、眼光はその容姿に似つかわしくないくらい鋭かった。
「なんだと!」
マスターが驚きの声を上げた。
「な、なにいってんだ!俺達は食い逃げしようとしたやつを・・・・・」
「食い逃げをしたやつを連行してそのまま、自分らもトンズラする。それがお前らの手口だろ、あ?」
「てめえ!ナメた口、聞いてんじゃねえぞ!」
3人組の一人、スキンヘッドが殴りかかった。しかし、男はヒョイと交わし、腕を捩じ上げた。
「いててて、あ、姐さん!」
スキンヘッドは仲間の女に助けを求めた。どうやら、3人組のリーダーのようだ。
「は、放しなさいよ!あたし達を誰だと思ってんの!」
男はスキンヘッドの手を放し、不敵に笑った。
「誰だよ?」
女はバッグから縦に丸めた羊紙皮を引っ張り出し、広げた。なにやら見たことのない文字が規則的に並んでいる。
「あたしはBランクの盗賊のレビンだ!そだ!そこの二人はあたしの弟子よ!わかったら邪魔しないことね!」
「ほ~う・・・・あんたがレビンか、あの悪名高い」
「なんですって?!」
男はレビンの言葉を無視して、羊紙皮を引っ手繰る。
「な、なにすんのよ!」
男は羊紙皮をしげしげと眺めた。
「確かに・・・これは本物のようだな」
「当たり前でしょ!わかったら・・・・・」
勝ち誇ったように云うレビンの男は自分の懐から同じ羊紙皮を引っ張り出し、レビンの目の前に広げた。レビンはそれを見て固まる。
「Sランク盗賊の・・・・・フェイト?あ、あんたが?!あのフェイト?!」
レビンは驚きの声を上げ、一歩後ずさる。
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