眠れない女と眠りたくない男

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「なんで眠りたいの? 起きてりゃいいじゃん」 薬剤師がカウンターに頬杖をついて上から尋ねる。 「ほら、最近深夜番組もバカなやつやってるよ、それ観てたら眠くなるって」 「そんなんじゃだめなんです! 私は明日に備えて眠りたいんです!」 女性も負けず言い返す。 「明日…なにがあんの?」 「プレゼンです」 「プ…プレゼン?」 「はい、私たちチームが半年かけて作った企画をクライアントにプレゼンするんです。私たちの将来がかかった大事な日なんです!」 「プレゼン? クライアント? おまえはなにを言っている?」 薬剤師が首をかしげる。どうやらカタカナは苦手らしい。 「と、とにかく薬をください。眠りたいんです!」 さすがにカタカナの説明は面倒、それにさらに目が冴えてくる、女性が苛立つ。 「他には?」 「え!」 「他にもあるんじゃない? 気になって眠れないこと?」 な、なんでわかったの?…女性が心をみすかされた気がしてたじろぐ。 「じ…じつは…」 「あるんだな」 薬剤師がニヤリと笑う。 「は、はい、プレゼンが終わったら、結果がどうあれ、お疲れ会をすることになってるんです。そこに田辺さんが来ることになって…」 「田辺? 誰だ、それ」 「私の…今の…彼氏です…」     
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