眠れない女と眠りたくない男

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「は? なんだお前、その口の聞き方は?」 と、薬剤師が自分のことを棚に上げて言う。 「いいから、よく効くドリンクをくれ! おれはこれから長距離トラックを運転すんだ。まっすぐな高速を運転すると眠くなる、時間があれば休憩するが今回は時間がねぇ、休んじゃいられねぇんだよ」 ドン! と薬剤師が一本栄養ドリンクっぽいビンをカウンターに置く。 「…これか? ほんとに効くのかよ!」 しげしげと男がビンを見回す。 「ああ、効く。思いっきり振ってフタを開けろ、すぐに眠気が飛んで行く」 男がアンプルを手にとる。まだ見回している。 「大丈夫なのか?これ? ほんとに効くんだな?」 「ああ、もし効かなかったら一億やる」 「マジで!」 「マジだ! それくらい効く、ただしこれは薬じゃない、薬というのは自然界に…」 と、薬剤師が語り始めた時、男が「よし、わかった、ありがとよ」と言って急いで出て行った。 やれやれ、眠りたい奴もいれば眠りたくない奴もいる、人間はよくわからん生き物だ… 薬剤師が心の中で呟いた。 男がトラックを運転している、まっすぐな単調な道、ここまでは順調に走っている。 今日は大丈夫だ…     
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