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眠れない女と眠りたくない男
その薬局は繁華街から少し離れた静かな場所にある24時間営業している。
店には薬剤師が一人、いつも受け付けにちょこんと座っている。
年齢不詳、女性、おかっぱのショートカットに銀縁の眼鏡、小さな体型に白衣姿、性格は横柄、話し方は常に上から。
なんなんだこいつは! と思いながらも客は絶え間なくやってくる。24時間営業だから、と処方される薬? がよく効くから。
そしてこの薬局のもう一つ不思議なところがある、薬局なのに薬がない。陳列棚はいつもなにもない。
その日も夜の10時を少し過ぎた頃、一人の女性がやってきた。
ガラリと扉を開け入ってきた女性、長い髪を束ね、丸い眼鏡、服はスウェット、おそらく昼間は長い髪をさらっと流し、コンタクトで化粧バッチリ、スーツをパリッと着こなしているんだろうなというタイプ。
入ってくるなりキョロキョロ店内を見回す。
「あの…ここ薬局ですよね?」と尋ねる。
「そうだよ」
薬剤師がぶっきらぼうに返す。
「あの、眠れないんです。眠れる薬をください」
勢いよく女性が話し始める。
「あ、でも、私、薬に弱い体質なんです。副作用のない優しい薬をお願いします」
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