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茜は最後まで抵抗し続けていたので、悪いと思うが達也に腕を捕まえておいてもらう。
これまで敵対してたメガネの男も、さすがに今回の行動は理解の外だったらしい。憐れむでもなく、バカにするでもなく、ただただ驚いているようだった。
「正気か!?お前らの行動は全然論理的じゃない!ただの自殺行為だ!」
「違う!いいからお前らも俺達と一緒に来るんだ」
「ああ、なるほどそういうことですか。僕の頭脳に勝てないから、そうやってデタラメを吹聴して、いざ飛び降りるときになったら、自分達だけ飛び降りないって魂胆ですか。見苦しいですねぇ。猿の足掻きは」
メガネの男は勝手に被害妄想を広げ、聞く耳を持たない。
『よ~ん』
『さ~ん』
カウントダウンもあと残り少ない。くそ!もう仕方がない。
『に~い』
「美代奈!達也!茜!飛び降りるぞ!!」
「うん!」
「しゃあっ!」
「いや~~!!」
『い~ち』
一斉にジャンプすると、四人は大きく口を広げた化物の中に飲み込まれていく。
『ぜ~ろ』
頭上でついにカウントダウンが終わりを迎えた。
「ぎゃああああああ!」
「なんでなんでなんで!?」
「だ、誰かだじゅげてーー!!」
『あはははははははははははは!!』
断末魔の叫びとぴのきおの笑い声が折り重なって聞こえてくる。相反するその音はまるで不協和音を奏でてるようだった。
真司はその音が聞こえなくなるまで、必死に耳を塞いだ。上で何が起きているのかなんて想像したくもなかった。
そして真司の意識はそこで途絶えた。
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