白石獅子雄は、眠らない

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「シシオさんってほんとすごおい。マジで勝ち組って感じだよねえ」  甘ったるい香水のにおいを振りまきながら、茶色い髪の女が上目遣いでしなだれかかってきた。 「勝ち組? 当たり前だろ、だってこのオレだぞ。勝つに決まってるさ」  高らかに声を響かせて笑ったオレに、菊池が燃えるような目を向けている。  嫉妬か。まあいいだろう。菊池は若い奴にしては珍しく、気概のある奴だからな。生意気だがそういうところが気に入っているんだ。 「実はなあ、ここだけの話だけどオレ、今度のプロジェクトが完遂したらさ、フェアウェルしようと思ってるんだよな」 「え……シシオさん、マジっすかそれ」  丸くなった菊池の目が、それからすっと細められた。 「ああ。とうとうオレも一国一城の主になろうかと思ってさ。どうだ菊池、お前も来るか?」  男なら誰もが夢見る、起業独立。オレはついに王手をかけていた。 「マジなら、オレ、行くっすよ。オレ、シシオさんのこと尊敬してますから」  若い熱量の瞳が二つ、オレを見つめ返した。
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