白石獅子雄は、眠らない

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 聞くところによると、人類は一日に七時間程度を睡眠に費やしているという。オレに言わせりゃ、そんなの全くの無駄無駄無駄だ。  七時間あったら何ができると思っているんだ。  人より上に行きたいのなら、七時間も寝ていないでせめてそのうちの四時間は仕事に費やしたらいいものを。  自分で認めるのは悔しい気もするが、かく言うオレも他人より何かが長けた人間ではなかった。スポーツや芸術の才能はもとより、別段勉強が出来る方でもなく誰かに取り入るのがうまいわけでもなく、家が金持ちだったり特別なコネが使えたりもしない、要するに十把一絡げの凡人。それがオレだ。  ただひとつ、眠らないという才能を除いて。  自分では記憶のない幼少期や、子供時代はふつうと変わらないどころかよく寝る子供だったというのだが、ある日突然オレは眠らないでいられるようになった。  というよりたぶん、気がついたのだ。  人間は眠らなくとも生きていられる。いやむしろ、眠るのは時間の無駄だ。
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