白石獅子雄は、眠らない

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 手始めにオレは眠るのをやめてその時間を勉強にあててみることにした。もちろん、昼は学校へ行くし、部活だって適当にこなした。友達と寄り道してラーメンなんか食って家に帰ってから、それからオレは寝ないで勉強をしてみたのだ。  一日に七、八時間も勉強すればいやでもできるようにもなるわけで、あっという間にオレの偏差値は二十も上がった。  人間ってのは現金にできてるもんで、結果が出てみんなから「お前って頭いいんだな」だの「やればできるじゃないか」なんて言われると変にやる気が出てくる。調子に乗って毎日受験勉強しているうちに、いつの間にかオレはたいして苦しいとも思わず東大生になっていた。  日本の大学ってのは実は勉強するところではなくて遊びに行くところなもんで、それは日本一と言われるオレの母校でもたいして変わりはなかった。  法学だの医学だのガチで学者を目指す一部の勉強が趣味な輩を除けば、気楽な学生たちはまあ遊んでばかりいた。受験勉強という目的を失ったオレは時間をもてあまし、しばらくは麻雀だのパチンコなんかにも手を出したが、すぐに飽きて興味を失った。
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