白石獅子雄は、眠らない

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 多くの人間は本当に損をしていると思う。  人生ってのは全然公平になんてできていない。身分制こそ廃止された我が国でも、見えない社会階層は確実に存在していて、どの階層に生まれるか、どんな教育を受けられるか、そこから何を掴めるのかは運次第だ。ましてや生まれついて不細工だの陰気だの、能力が高いだの低いだの、自分の力じゃひっくり返せないことが多すぎる。その中で唯一平等なのが時間なのに、与えられた今日という二十四時間のうち、七時間を寝て過ごすなんてもったいないとは思わないのか。  リーダーポジションが増えてからは、報告書だのデータ作成は後進に任せて、オレ自身は異種交流と人脈作り、それから肉体改造に時間を割いている。別に仕事に飽きたわけじゃない。これは自分への投資みたいなものだ。  というのも、人脈を作っておくことで様々な業種のトレンドを押さえることができるし、来るべき時には独立の足がかりにしようという腹だ。  このオレが、このまま会社のコマで終わるなんてもったいないだろう。  肉体改造はあれだ。この業種、なんだかんだで見た目がいい方が信用されやすいというのと、筋肉は時間を裏切らないことを知ってしまったからだ。付き合いでキャバクラなんか行くようになると、なんだかんだ不摂生だからな。  金と筋肉と人脈と。  これらはオレの時間が生み出した財産だ。オレはオレの眠らないという才能をフルに生かし、やっとここまでのぼり詰めたのだ!
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