第1章 記憶喪失

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「珠姫?」 誰かの声が聞こえて、私は重い瞼を開けた。 逆光で、顔までは見えなかったけれど、シルエットで男性だと分かった。 「あなたは、誰?」 「誰って、僕の顔忘れたの?」 もしかして、知っている人? その瞬間、頭に鈍い痛みが走った。 「無理しないで。事故に遭ったんだ。」 全身の痛みのせいか、それすら思い出す事ができない。 「あなたは、何て名前なの?」 「賢人だよ。知っているくせに。」 「私は?」 一瞬驚く、彼。 「市川珠姫でしょ?何の冗談?」 私は手で、顔を覆った。 「分からないの……何も……」 自分が誰なのかも、分からない。 すぐ側にいる人も、分からない。
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