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「珠姫?」
誰かの声が聞こえて、私は重い瞼を開けた。
逆光で、顔までは見えなかったけれど、シルエットで男性だと分かった。
「あなたは、誰?」
「誰って、僕の顔忘れたの?」
もしかして、知っている人?
その瞬間、頭に鈍い痛みが走った。
「無理しないで。事故に遭ったんだ。」
全身の痛みのせいか、それすら思い出す事ができない。
「あなたは、何て名前なの?」
「賢人だよ。知っているくせに。」
「私は?」
一瞬驚く、彼。
「市川珠姫でしょ?何の冗談?」
私は手で、顔を覆った。
「分からないの……何も……」
自分が誰なのかも、分からない。
すぐ側にいる人も、分からない。
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