34人が本棚に入れています
本棚に追加
「うわっ、お、おまえ、誰?」
『人に名前を聞くときは自分から名乗るべきだろう、教わらなかったのか』
小さい身体のくせに足を組み腕まで組んでる。偉そうにな態度に偉そうな口調。
身体に似合わない声がどこからどう見てもアンバランスだ。咄嗟に肩を見れば姿はなく鏡を見ればちょこんと座っている。これってもしかして...…
「お、おまえ、幽霊……か?」
『人聞きの悪い。儂は..….そうだな。お前達の世界でいう妖精みたいなもんだ。見えてるのはお前だけ。穴に落ちて良かったな』
穴に落ちて喜ぶなんて奴はいない。膝を怪我しなかっただけラッキーってなものだ。
俺らの世界の妖精って...…妖精なんて本の中の話で実在なんかしない。それに自分で妖精っていうあたりどうかとも思うけど。
『それにさっきから聞いてればお前お前と失礼な奴だ。儂にはイノウという名がある。お前はゆたか、吾妻 由隆、違うか?』
「そ、そうだけど、なんで知ってんの?」
『お前のことはなんでも知っている。それはそうと由隆、儂は構わんがお前時間大丈夫なのか?』
そう言われてハッと、壁にかかる時計を見た。
「やべっ!遅刻する!」
『騒がしいやつだな。制服、クローゼットの前に吊るしてあるぞ』
「へ?お前、魔法使えるのか?」
「お前ではない。イノウ。話は帰ってからだ。早く行け」
「おまっ、あ、イノウはどうすんの?」
『儂の心配か.....お前の肩にいるぞ。聞きたいことがあるなら聞けばいい。が、しかし人のいないところでな』
「なんで?」
『由隆が変人に見られるからだろ』
鏡越しに目があったイノウはどうしようもないなと呟いてクワックワッと笑った。
最初のコメントを投稿しよう!