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きりがくれした城では
西洋風なのか和風なのか、どっちつかずのよろいを着たおさむらいが、マントをひるがえしながらさっそうと歩いてきます。
顔はほっそりとしていて、目は切れ長。現代風に言うと、しょうゆ顔のイケメンというところでしょうか。
ほおにあるひとすじの切り傷は、いくさで負ったものかも知れません。
ただ、顔立ちは日本人っぽくなく、どちらかというと西洋風です。
ここはお城の中。おさむらいと同じで、お城の中も日本風なのか西洋風なのか良くわかりません。
おさむらいの歩いている通路に窓はなく、ゆかは木で出来ていて、おさむらいははだしです。カベも木で出来ているようですが、ところどころにゴツゴツとした岩が張りだしていて、3、4メートル置きにたいまつの火が赤々と燃えています。
ゆらゆらとゆれるたいまつの火が、おさむらいの顔を赤く染めていました。
おさむらいはひとつのドアの前で止まり、ノックをしました。
「女王さま。よろしいでしょうか」
「いめがのじょう、か。入れ」
おさむらいはドアを開けると中へ入り、片手を胸に当てて、うやうやしく頭を下げました。
「天にふたつとなき星・我が、女王」
いめがのじょうが顔を上げると、女王さまは竹であんだソファーにゆるりと座っていました。ソファーにかけられたフワフワの毛皮が、女王さまの体をゆったりと包んでいます。
ここは女王さまのプライベートな部屋です。
女王としての仕事でカルタ兵やいめがのじょうに会う時は大広間を使いますが、今はプライベートな時間なのでしょう。
女王さまもくつははいていませんが、はだしではなく絹のくつ下をはいていました。
その足先をぶらぶらとゆらしながら、
「いめがのじょう。この国の習わしに従って城を作ってみたが、やはりはだしというのは我らにはそぐわぬのお」
と、ぼやきます。
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