きりがくれした城では

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「おおせの通り。我らにはくつをぬいで住まいに上がるという習わしがありません」 「ふふん。まあ、良い。わらわのねらいがみごと成ったあかつきには勝ち名乗りをあげ、我らの国にもどる事にしようぞ」 「は。時に女王。どのようなお心づもりであのようなおたわむれを」 「何の事じゃ?」 「あの小ムスメにございます。あのようなこわっぱ、あの場で切りすてればめんどうもなかったでござろうが」 「めんどうなど、ない。わざわざ切りすてなくとも、な。そのそもあのような小ムスメひとり、生きていようが死のうがわらわには何のあだにもならんわ」 「では、なぜ」 「そうじゃな、ほんに、たわむれじゃのお」 「まほうの鏡を、あのような小ムスメが見つけられるとお思いか?」 「思わぬ。まほうの鏡というのも本当にあるかどうかわからぬ。この国の伝説に過ぎないらしいからのお」 「では、あの小ムスメにまほうの鏡を探して身の証を立てよとおおせられたのは?」 「王家のヒメと名乗るなどけしからん小ムスメじゃが、本物のヒメであろうとただのこわっぱであろうと、そのような事に興味はない」 「では、なぜ?」  と、いめがのじょうは、もう一度同じ事を聞きました。 「あの時ひとつ思い出したのじゃ」 「何をでございますか?」  女王さまは立ち上がり、カベに作りつけられた両開きのクローゼットの中から宝箱をひとつ取り出しました。 「これじゃよ」  箱を開けて女王さまが取り出したのはひとつの巻物でした。その巻物をくるくる開くと、女王さまはそれをいめがのじょうに見せました。
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