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ジャイダラボッチはひとりぼっち
私はいつしか走りだしていた。
森をぬけて、頭の上をおおう枝や葉っぱがなくなり、開けた場所に出たの。
「見て、ジート! お日さまだよ!」
「ああ、わかってるよ。…まったく、おてんとうさんくらいで、さわがしい小ムスメだな」
うす暗い森の中になれていたので太陽がまぶしい。
女王さまの作った道では空が開けて太陽が見えたけど、それから久しぶりに見るような気がする。何だかうれしいな~。
目の前にはたんぼが広がっていた。ふつうの日本のいなかの風景みたい。今にも農家の人がトラクターに乗って出てきそう。
森を出たら、もっと、なんか、こう、ファンタジーに出てくるみたいな、外国みたいな景色が待ってると思ったのに。
「あ、そうだ」
私はあやかしの森をふり返った。
真ん中に、たった今私たちが通ってきた道がぽっかりと開いていたけど、すぐに左右からわさわさと木が動いてきて閉じてしまった。あとはシーンと静まり返った、ただの森になっちゃった。
外側から見るあやかしの森は、何だかどうどうとしていてカッコ良かった。
「ありがとうございました」
私はあやかしの森に向かって、おじぎをした。
それを見ていたジートは、あんぐりと口を開いて、
「お前、バカじゃねえか。…イヤ、ぜったいバカだろ」
あきれたように言う。
「えー、なんでー」
私はほっぺたをプクッとふくらませた。プンプン!
「どこの世界に森に礼を言うバカがいるんだよ」
「だってー、道を作って私たちを通してくれたじゃん。人に何かしてもらったら、ちゃんとお礼を言わなきゃ。…あ、人じゃないけど」
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