タツミヤアカネものがたり 序章

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トキシマと一緒に帰った 電車の中で、私はぽつぽつと話した 12才のときのこと マリコのこと そして今の自分の気持ち‥ 「あんた好き。 でも言ったらひくでしょう? だから言わないの。 あんたも聞かなかったことにして」 トキシマは何も言わなかった トキシマが去る日が来た 上長に、三時でアガらせてくれと言ってるのを聞いた ふつうに働いて、それじゃあって帰っていった お世話になりました ふつうのあいさつ ジーンズとニットの後ろ姿見送った ひとこともなしかあ…って気持ちと なしでよかったって気持ち 半々で私を引き裂く まあいい 夕方の物販して帰… トキシマがこっち来る 花束持ってる 男スーツ着てる どゆこと? オバサンたちがニヤニヤしてる どゆこと?? トキシマが私の前にひざまづいた 本当の名はアミシマユキヤです 会社ひきつぐにあたり何も知らんじゃだめじゃんかと祖父に言われ、働かされてました タツミヤ アカネさん よかったら俺と交際してもらえますか? 私は驚いて声もでない 周囲を見渡すと オバサンたちがニヤニヤしながら頷いてる 何度も何度も どうやら夢じゃないらしいけど待って 私重要なこと確認してない… 「トキシマ男だったの?」 「うん。 アカネはさいごまで気づかなかったけど」 あたしらは初日からわかってたけどね オバサンたちのひやかしめいた声を聞きながら、 私はただただ驚いてる これは夢? 何? うれしいのか何なのか 私はとにかく立ちつくしてる 二年後、奥さんになって、名実ともにアミシマ糧食のおかみさんにならされちゃうのだけど それはまた別の話
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