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そして、ある時を境に、アユミはタバコをやめた。
ひょんなことからヒロトが気管支が弱いことを知ったからだ。
アユミのタバコは、そもそもカッコつけて口先だけで吸っていただけ。
美味いと思ったことはなく、辞めるのは簡単だった。
アユミは、ヒロトと一緒に登下校するために、ちゃんと学校に来るようになり、二年生の夏休み明けからは服装も髪の色も大人しくなり、授業にも真面目に出始める。
夏休みの間、ヒロトの部活のオフの日は、図書館デートで一緒に宿題して過ごしたのが、勉強の面白さを知るきっかけになった。
そして、もう一つ。
夏休みの終わり間際、、それまで可愛がってもらっていた母方の祖母が交通事故で亡くなったのも転機になった。
“アユミちゃんは、やればできる子だから”
それが父や母から叱られるアユミを庇う際の、祖母のいつもの口癖だった。
グレたきっかけは、多分他愛もないことだった。
デキのいい兄に比較されてばかりの妹だったアユミ。
特に父はアユミに厳しかった。
兄の卒業した高校になんとか入ったのものの、そこには卒業したはずの兄の影がまだ色濃く残っていた。
ここでも“妹”として比較される。
そんな生活に反発し、授業に出なくなるのは必然だったのかもしれない。
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