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夏休みが始まったばかりの頃、ヒロトとデート中、街で偶然祖母と出会ったことがある。
デートを肉親に見つかる気まずさで素っ気なく対応した日の夜。
祖母からアユミのスマホに電話があった。
「彼、すごく素直でいい子だね。アユミちゃんのこと真っ直ぐ見てくれる。
おばあちゃん、彼なら安心してアユミちゃんを任せられるわ」
祖母もやはりアユミがグレていることを祖母なりに心配していたのだ。
祖母の話を聞いている時は平静を保ったものの、電話を切った後、アユミは涙が溢れた。
嬉しいのと、今までの自分が恥ずかしくなったのとが混ざった複雑な涙だ。
“天国のおばあちゃんに恥ずかしくない子になりたい…”
その一心で2学期を過ごし、3月期の進路指導では、ついに大学進学を口にするまでになった。
『おばあちゃんのために、ヒロトのために、ヒロトに似合う彼女になりたい』
それがすべての原動力だった。
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