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それは、アユミが2年生なったばかりの頃。校舎の裏のゴミ捨て場の陰に隠れてタバコを吸っていたアユミと、たまたま掃除当番でゴミを捨てに来た新入生のヒロトが出会ったのが、そもそもの始まりだった。
「うわっ、ビビった!」
まさかそんなところに人がいるとは思ってなかったヒロトが、物陰から急に顔を出したアユミに驚いて声を上げた。
「おい、てめえ、なに見てんだよ?」
「み…見てません」
鉢合わせた男子学生の学ランのカラーにつけた徽章が1年生のものであることを確認したアユミは、マウントを取ろうと、少し強気にヒロトに迫る。
「見ただろ?あ、おい、チクんじゃねえぞ、ボクちゃん」
「ボクちゃんじゃないです。柏木ヒロトです」
「お前の名前なんて聞いてねえよ。てめえバカだろ?ウチのこと女だからって舐めてんのか?」
アユミは、この大人しそうな1年生をビビらせようとさらに強気になって凄む。
少ないボキャブラリーの中から、思いつくまま悪口雑言を重ねる。
…が、それが裏目に出た。
マウントを取ろうとしたはずがやり過ぎて、大人しそうなヒロトを怒らせてしまった。
「黙って聞いてたら、人のこと、バカにし過ぎじゃないですか?
自分、キレたらなにするか自分でも分からないんで、気をつけて下さい」
ヒロトは、こめかみをヒクつかせながらアユミを睨み返す。
アユミは、新入生のヒロトの思わぬ反撃に動揺した。
“な、なんだコイツ?中二病かよ”
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