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止んだ空は茜色に淀む
降りた駅の屋根の下から
雪が止んだ空の下へ。
茜色の光が雲間から僅かに漏れて
銀世界を塗り替えていく。
影は痣のように青暗い。
俺のスニーカーと陽田の靴が
異なるリズムで雪を踏み鳴らす。
あまり心地の良い音ではないが、
風が強く吹いていないおかげで
こうして、陽田の後ろをのんびり歩ける。
頭から肩までの体感重力が軽く感じる。
陽田の後頭部を睨みながら
雪雲と夕陽が織り成す
空の絵画を眺めていられる。
眺めていると、
自分の胸の底からナニカ暖かい感情が湧き出て
同時にこの光景を
自分だけの額に入れてしまいたくなる。
後者が『独占欲』だというのを
存外すぐに気付いたが、
前者を果たして、『愛しさ』と表現して良いのか
俺は判断しかねていた。
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