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「色ボケ紳士、て何ですか」
「さあ、僕のことかな、多分?」
朝比奈さんは素知らぬ顔で、着信が鳴らないようサイレントにしてしまった。
「なんで色ボケ?」
「たいしたことじゃないよ」
「あ、はぐらかさないでくださいよ」
ついしつこくし過ぎてしまっただろうか、と言ってから後悔をする。
でも、聞きたい、いいよね冗談混じりだもん。
どうしても気になった。
大阪支社では恐れられてるはずの朝比奈さんに、平気で軽口が叩ける人がいる。
「……出張最後の日にね、ちょっと」
ぽい、と朝比奈さんがラグに置かれたクッションの上にスマホを投げた。
そして少し、照れ臭そうな笑みを浮かべる。
「帰る前に付き合えって飲みに誘われて、めんどくさくなって彼女が待ってるから早く帰るって言ったんだ」
「それで色ボケ?」
「仕事の付き合いより彼女優先にしたことが意外だったんじゃないかな。すごいぽかんとした顔してたから」
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