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「あの……ね」
「うん?」
優しい声音の返しに、甘えてもいいんだとほっとする。
けど、何を言おうと考えて来たわけではなかった私は、上手い言葉が見つからない。
「……電話、欲しい」
「え?」
「遅い時間でもいいから」
改めて言うことでもない、彼はいつも、出張中の時は、例え遅くなっても一度は連絡をくれている。
だけど、だからこそ今回に限って電話が鳴らないようなことになったら、と頭をかすめた。
「出張、やだ」
通らないとわかっているワガママを、再び俯いて口に出すと、手を伸ばし彼のスーツの袖口を握りしめる。
「早く帰って来てね」
本当は四六時中だってこうして傍に居たいくらいだけど、それは現実的じゃない。
返事のない彼が気になって、ちらっと視線を上向けた。
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