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ばしばしばし、と何度叩いても彼は楽しそうに難なく私の手を受け止めた。
「ばか!もう!」
「ごめんね。止まらなかった」
言いながら、許しを乞うようにまたキスされて頭を撫でられる。
謝ってるけど反省しているようには更々見えないその顔に、怒る気力も萎えてくる。
こうなることも、お見通しなのだろう。
頭を撫でた手が今度は頬を撫でてくすぐり、だめ押しの機嫌取りをする。
「行きたくないけど、行ってくるよ」
「……はい」
「電話もするし」
擽る指が目尻に移り、思わず目を閉じた。
「土曜には帰るから、ちゃんと予定空けておいて」
「……また延びたりしない?」
「頑張るよ」
再び重なった唇は、さすがに軽く啄んだだけで離れて行った。
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