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仕事の話から今度は一転、『吉住』から『真帆』呼びに変わった。
また揶揄ってるのか、と思ったけれど、そうではなかったと続いた会話の微妙なニュアンスで私は気付くことになる。
仕事と、プライベート。
『吉住』と『真帆』
このふたつは、彼の中では繋がったひとつの問題であったのだ。
「……夢中に、なったらダメですか?」
「ダメなことはないよ」
顔ごと彼に向ければ、顎を擽っていた指がくるりと翻って頬に触れた。
その時の彼の目が、なんとも複雑だったのだ。
切なげでいて、誇らしくもあるような、慈しむような。
心底困った、と伝わってくる、優しい苦笑いだった。
「ただ、タイミングを測りかねる、かな」
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