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「だから、僕は今までどおりだよ」
「え?」
「真帆が早く結婚したいと思うように、色々策を練ってみるよ。気長に口説く。……今まで通りね」
そう言った朝比奈さんは、なんだかとても楽しそうに見えたのだが、それは気のせいではないらしい。
「結婚って本来そういうものでしょう。妥協や惰性でするものじゃない。それにどう口説き落とそうか考えるのは、結婚する前しかできないことだしね」
「……楽しんでますか」
「楽しいよ。真帆といると」
ソファに押し倒されたままで、朝比奈さんの手が私の髪を撫でた。
それから目尻や瞼に口づけられて、その都度目を閉じる。
「結婚はしたいけど、真帆が傍にいてくれれば形はなんだっていいのかもしれない」
こんなにストレートに、愛されて必要とされている。
それを伝えられる幸せにじんと目頭が熱くなり、なんだかとてもたまらない気持ちになって彼の首筋に縋り付いた。
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