奪うものの分だけ、それ以上

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その頃、実際もう荷物を取りに帰る程度にしかアパートにいなかった私。 だって、忙しい時期、朝比奈さんが迎えに来てくれたら必然的に彼のマンションに行く形になる。 アパートまで送って、といえばきっと送ってくれただろうけど、朝比奈さんの手間を増やすことになる。 全く、同棲と変わらない状況に、彼が言った。 「真帆、今の状況じゃもう一緒に住んでるのと何も変わらないよ。家賃も光熱費も勿体ないからうちに越しておいで」 「うん……お願いします」 彼の言い分はもっともで、私はこっくりと素直に頷いた。 すると朝比奈さんは、なんともいえないくらいに柔らかく、嬉しそうに笑った。 「良かった。一番の誕生日プレゼントだよ」 もちろん、ちゃんとプレゼントのキーケースも渡したけれど、どちらも同じくらいに喜んでくれた。
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