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これらはきっと、由くんが帰って来た時に手に持っていた、ショップバッグの中身だ。
花帆用のお菓子ばかりこんなに買ってきたのかと、ラグの散らかりようと由くんの顔を見比べていれば、私の言いたいことがわかったのだろう、彼がちょっとバツの悪い顔を浮かべてから、唇の前で人差し指を立てる。
静かに、ということだろう。
きっと、夢中になっている花帆を刺激しないようにということだ。
そろっと由くんの背後までまわり近づき、顔を寄せる。
耳元で、こそこそと小さな声で彼が言った。
「……後ろにいるのが僕だってバレたら多分泣かれるから」
一体どうやったのかはわからないけれど、抱いているのが自分だと花帆に悟られないようにこの状態まで持ち込んだらしい。
確かに、今も花帆は由くんに背中を預けているだけで、せんべいに夢中でまったくこちらを見向きもしない。
それでも、久しぶりに触れられたことがよっぽど嬉しいんだろう。
由くんは、蕩けて幸せそうに、静かに微笑んでいた。
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