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「いくら花帆に泣かれたってそんなことあるわけないよ」
苦笑いをしてはっきりとそう言ったが、真帆の顔色はまだ暗い。
「だって……最近あまり話せてもないし」
「そうだね、それは寂しいかな」
ぽん、と真帆の頭に手を置いて、少し身体を離す。
片手に持っていた手提げ袋を、真帆に差し出した。
「これ、お土産」
「あっ! 新しいメーカーの? これ食べて見たかったの」
「生クリームが少ないフルーツタルトにしておいたから。これなら真帆も遠慮しないで食べられると思って……花帆が寝たら久しぶりにふたりでゆっくり話そう」
すると、ぱっと真帆の表情が華やいだ。
寂しいのはきっと、お互い様なのだ。
だったら少ない時間の中で、意識して二人の時間を作る他ない。
「嬉しい! ケーキの為にわざわざ百貨店寄ってくれてたの?」
「返って心配かけて悪かったけどね」
「ううん、ありがとう。……そっちの袋は?」
真帆には手渡さなかった、もうひとつの袋を指摘され。
若干、狼狽える。
ケーキを買うのに、それほど時間はかからない。
百貨店に寄る前に、僕が立ち寄った場所があった。
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