番外編SS

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「大変ですね」 父親は、随分背が高い。 がっしりとした印象だが、さすがに小学生にこれだけまとわりつかれてはきつかろう。 と、つい声をかけていた。 彼は、目が合うと「にっ」と人懐こい笑顔を浮かべる。 ……ああ。 こういう笑顔は確かに、子供には好かれそうだ。 僕も笑ってみたが、さっきまであれほど騒いでいた小学生のふたりが、さっと父親の影に隠れてしまった。 「家族全員で来るとどうしても大騒ぎになっちまって……すんませんうるさくして」 「いえ、三人も居て賑やかで羨ましいですよ」 「いえ、四人なんすよ。今奥さんがひとりトイレに連れて行ってて」 四人。 少子化なんて嘘だな。 羨ましい限りだが、四人全員に泣かれる自分が容易に想像出来てしまった。
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