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「うちはまだひとり目なんですが……人見知りが激しくて」
子どもに懐かれている様子があまりに羨ましく、つい口を突いて出た。
「ああ、あれはきついっすね。うちも二人目……こいつの時がそうで」
ぽん、と男の手が小学生の男の子の頭に乗った。
「今、いくつぐらいっすか」
「まだ六か月で……もうすぐ七か月か。妻でなければ抱っこも許してくれなくて、僕の顔を見るだけで泣きだすんです。それまでは可能な限り手伝ってきたこともできなくて、妻も疲れてきているもので、何か方法がないかと思って」
「ああ、それで育児書っすか」
「まあ」
「もう、離乳食とか初めてます?」
男が駄菓子の棚に視線を彷徨わせながら、唐突に言った。
「今、一日一回に慣れてきて、順調だと言ってましたね」
男が何かを探しながら、棚を移動していく。
子どもふたりも、彼の腰にくっついて離れない、その様子を見ていれば、本当に父親が大好きなのだろうと伝わってくる。
「これ、俺はちょっとやりすぎちゃって奥さんには怒られたんすけどねー……」
「何か、方法があるんですか」
「いや、絶対ってわけじゃないすけど、なんでもやってみる価値はあるかなって。だってまじつらいっすよね、一時的なものだって言うけど、この時期のこの子は今しか見られないのにって」
その通りだ……赤ん坊の成長は早い。
ひと月経てば表情も顔形も違う、仕草も違うのに、触れられないなんてあんまりだ。
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