3757人が本棚に入れています
本棚に追加
「六か月なら……こんなんとかどうすか。後、向こうの冷蔵の棚にもいくつか」
「……一番、効果があったのはどれでしょう」
「これっすね。これ一択。まずこれで気を引いて……ってパターンが」
「なるほど」
さすが四人の子どもを育てているだけのことはあり、彼の話はとても興味深く、僕には救世主が如くだった。
「でもほんと、俺奥さんにめっちゃ怒られたんで……離乳食の進行を邪魔しない程度に」
彼が真剣な顔でそう言った時だった。
「陽介さーん? どこですか?」
遠くから少しハスキーな女性の声がする。
途端、彼の腰にしがみついて怯えていた子供たちが、ぱっと顔を上げた。
「ママだ!」
「あっ、こら! 待てって」
小学生二人組が、母親を探して走り出してしまい、彼も慌ててベビーカーの向きを変える。
「じゃ、すんません! 奥さんが探してるんで」
「ああ、ありがとうございました。試してみます」
そう言うとにっと彼は笑い、進行方向を向いたかと思うと。
「真琴さん! こっちっすよー!」
やけにデレっとしまりのない顔になり、スキップでもしはじめるのかと思うほどイソイソと子供たちの後を追う。
なんとも、賑やかで幸せそうな家族だった。
****
真帆side
****
きゅっ、とコックを捻り、シャワーを止めた。
この頃、特に花帆の人見知りが始まってから入浴も手早く済ませることが多くなってきた。
でも今日は、花帆の機嫌がいい。
由くんは既にお風呂を済ませて、リビングで花帆を見てくれているのだが、泣き声が聞こえないということはよく眠ってくれているのかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!