番外編SS

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それでもやはり気になって、髪を乾かすのもそこそこにして、急いでリビングに戻る。 廊下との境目の、すりガラスのドアをそうっと開けた。 しん、と静まり返った部屋に、何かの音が聞こえてくる。 「由くん?」 リビングに置いてあるベビーベッドのすぐ傍の、ラグの上で、由くんが胡坐をかいているのが見えた。 珍しい座り方をしているな、と首を傾げながら近づく。 なんともいえないくらい、愛おし気な目を自分が組んだ足の中に向けている。 見れば、そこには花帆が由くんの足に凭れて両手と両足を動かしながら、うっとりとした表情であかちゃんせんべいをしゃぶっていた。 由くんと花帆の周囲には、あかちゃんせんべいだけじゃない。 色々試そうと思ったのか、ボーロだとか小魚せんべいだとか、市販のフルーツペーストだとかが散らばっている。封が開いているのは、あかちゃんせんべいだけのようで、そこはホットする。
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