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せっかく真帆が寝かせたところで悪いけれど、これで抱っこが出来ると一瞬、嬉しかったのだが。
「花帆?」
ぷくぷくにふくらんだ頬に指で触れる。
じっと見つめてくる円らな目が、いつもと違うようなそんな気がした次の瞬間だった。
「ぎゃああああああん!」
「か、花帆!?」
突然、火が付いたように泣き出した。
ぐずるような泣き方じゃない、どこか痛いのだろうかと慌てて抱き上げる。
「ど、どうしたの? すごい泣き声」
「わからない。急に泣き出して……」
真帆が驚いてキッチンから顔を出した。
花帆の好きな立て抱きであやしても、背を反らせて泣きじゃくる。
それを見て、お玉を置いて真帆がキッチンから出て来てくれた。
「どこか悪いのかな、今日は確かにずっとぐずってたけど……」
「体温測ってみようか」
会話も聞き取りづらいほどの泣き声が、止まない。
彼女が体温計を取りに行く間、花帆の額や首筋に手を当てる。
が、それほど熱くも感じなかった。
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