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立て抱きを横抱きに変えても泣き止まない。
本当にどこか悪いのだろうか、だとしたら今夜救急で見てくれる病院を探しておかなければ。
「由くん!」
体温計を取ってきた真帆が、ソファに座って両手をこちらへ差し伸べる。
横抱きにしたまま、真帆の手に花帆を移した。
その途端だった。
激しい泣き声が止んで、すん、すんっと泣きしゃっくりに変わる。
真帆とふたり、目を見合わせた。
「あれ?」
真帆の胸に顔を摺り寄せ、直に呼吸も落ち着いてくる。
「おっぱいだったのかな?」
「でもさっき飲んだとこだけど……」
確かにお腹が空いた時の泣き方でもなかった。
それに今も、顔を摺り寄せただけで安心したように泣き止んでいるし、飲みたいわけではないらしい。
念のため、と真帆が体温計を花帆の耳にあてた。
「37度……普通だ。虫の居所が悪かったのかも?」
「かもしれないね。真帆、しばらく抱いててやって。食事の準備は僕がやるから」
そう言って、花帆を任せてキッチンに入る。
肉じゃがの鍋に火を入れながら、『もしや』と嫌な予測が頭を掠める。
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