番外編SS

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育児書は大抵読み漁った。 特に、『人見知り』に関するところは熟読した。 僕は、子供に好かれない。どころか嫌われる。 そんな僕にとって『人見知り』は一番恐れてきた現象で、どれだけ探しても明確な防ぎ方が見つからない。 解決法がない。 もしやそれが、遂に訪れたのではないか、という僕の予測は的中だった。 その日より、花帆は少しも僕に触らせてくれなくなった。 触らせるどころか、顔を見ただけで泣かれてしまうから近寄るのも心が痛い。 その日の朝、確かに抱っこで喜んでくれてそれから仕事に行ったのに、たった半日で一体何があって人見知りが発動したのかさっぱりわからない。 真帆以外の抱っこを受付けなくなって、一週間。 ぐったりソファに座る真帆の膝で、立て抱きで眠る花帆。 「真帆、大丈夫?」 「大丈夫……ごめんなさい、ご飯、この頃由くんに温めてもらってばっかり」 「それくらいかまわないよ」 けど、つらい。 あの、エンジェルスマイルで僕に向かって小さな手を伸ばしてきたのはほんの少し前の出来事のはずなのに、今は泣き顔か寝顔しか見られない。 当然、真帆も疲れてきている。 代わりたいのに、僕が抱くと必ず目を覚まして泣き出してしまうので、余計に真帆の負担を増やすだけだ。
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