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「朝から連絡してたのに、一切返事ないんだもんなぁ。」
ショッピングモールを離れ近くの河川敷を並んで歩きながら、彼はけらけらと笑った。
彼と知り合ったのは高校2年生のときだったか。
波長が合った私たちは別々の大学に進学した後も連絡を取り合っていて、お互い何かあるたびにこうして顔を合わせている。
朝からドタバタしていたせいですっかり忘れていたが、今日の夜は彼とご飯にいく約束をしていたのだ。
発信は彼からだった。
ただ、話したいことがあるなんて呼び出されるのは少し珍しかった。
そんなことも、携帯の画面を割った所から始まる今日1日のドタバタの中で、すっかり記憶の彼方に飛んで行ってしまっていたけれど。
「まぁでも、賭けには勝った」
私はそういう彼を横目でちらりと盗み見た。
夕日と呼ぶにはまだ早いが、少しオレンジ色に染まり出した陽の光を一身に受けた彼の横顔は、何か決意を決めてすっきりしたような、それでもどこかこわばっているような、長い付き合いの中であまり見たことのない顔をしていた。
でも、初めてではない。それは確かだった。
河川敷の歩道は、気持ちいいくらいに真っ直ぐに伸びている。彼の歩くペースはゆったりとしたリズムで、私は彼に体を預けるように歩調を合わせながら、記憶の波に乗っていた。
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