2368人が本棚に入れています
本棚に追加
/473ページ
またまた2人で頭を下げた。だけど、その手はしっかりと握られていたのを、愛花と陸人は見た。
夏希は最後に振り返り、愛花に言った。
「愛さん、本当にすみませんでした。……偶然だけど、愛さんの映画撮影、チラリと見ました。……必ず成功するだろうなってわかりました。2人で映画、見に行きます。頑張って下さい」
「夏希さん、引退するの?」
「もう濡れ場やりたくなかったし、剛士に悪いから。………これからは剛士を支えて行きます!……私だけしかできない事、やっと見つけられたような気持ちですから」
2人は本当にそのままラブラブのイチャイチャなままで事務所から出て行った。
愛花と陸人は閉まったドアをしばらく見つめ、それから抱き合った。
「うわーん!なんだかわけがわかんない内に引いてくれたー!」
「俺もびっくり!さては歩美ちゃんかな?」
「有りうる!!」
と、またノックの音がして、本当に歩美が顔を出した。中森も一緒だった。
「うふふー!感謝しろよー!2人共。2人が仕事に追われてる間にやることやったからね!まあ、ほとんど八木澤さんだけどね」
「話して!聞きたい!」
今度は中森と歩美がイスに座り、今までの出来事を全部話してくれた。
中森が話を聞いて言った。
「こりゃ、八木澤さんのドラマは断れなくなったわね!」
「そうだね。でも、夏希さん、本当に純愛してたんだね。6年前の彼氏と復活かあ…………本当は2人共、別れなんて望んでなかったんだろうね。……やっぱり若いから突っ走ったけれど、本当に好き合ってたから壊れなかったんだろうね」
「それと、多分だけど、自分の限界を見たんだと思う。やけに真面目に俺に言ってきたんだよな『女優に必要なのはなんだと思う』って。真面目に話したの、それだけだったけど、なんだか悩んでたのはわかった」
「なんて答えたの?」
「演技力と才能って。そうしたら『私は演技力はあるけれど、才能はないのかもしれない』って言ってたな。演技力はかなりあるとは認めるけど………」
中森も頷いて言った。
「確かに演技力はあるけれど、あのままじゃ濡れ場のベテラン女優にしかなれないわね。なまじ演技力があるがゆえに………夏希さんの濡れ場はかなり高度だったもの」
歩美も言った。
「でも夏希さんが望んだのは濡れ場女優じゃないからね」
最初のコメントを投稿しよう!