51話 恋をもう1度

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歩美は初めて異性に自分の話をする事ができた。 「そうか。……俺も怖い?」 「怖くないです。……なんかむしろ、放っておけないような感じする」 「歩美ちゃんは世話焼きタイプなんだな」 「当たり。本当に愛花と陸人さんは放っておけなかったな」 「じゃあ、良いのを見せてあげよう!」 と、車が走り出した。 着いた場所は都内の高級マンション。 「ここは?」 「俺の家。大丈夫。襲ったりしないから!」 と、高級マンションの最上階へ。 歩美は入った瞬間、思いきり叫んだ。 「何これええーーーっ!!」 床に服は散らかりっぱなし。綺麗なはずの窓は結露のあとで、一望できるはずの景色は歪んでいた。 キッチンも缶、グラス、お弁当の容器でシンクはいっぱい。 ベッドの上にも靴下やシャツ、なぜだかコートやセーターまで散らばっていた。 「仕事一筋に生きた男の証ってとこ?」 「バカ言わないで!ごみ袋は?スポンジも!」 「え?掃除するの?せっかくのデートなのに?」 「綺麗にしなきゃデートはしません!ごみ袋ないなら買ってきて!スポンジも!あと洗剤一式!!」 「はい!」 八木澤が慌てて買いに出た。 黙々と歩美はベランダに布団を干して、その間に洗濯を回し、コートやセーターなどまとめて『出して来い』の1言。 八木澤はすっ飛んで出て行った。 八木澤がクリーニングから戻ると、まあびっくり。床まで磨かれていた。 「……すげ」 「こんな所で生活してたら病気になりますよ!あ、風呂場はハイター撒いたから入らないで!手が空いたなら窓拭いて!」 「ディナーの予約したんだけど……」 「する事してから!窓は乾拭きも!」 「はい」 やっとキッチンだけになり、八木澤は『邪魔だから座ってろ』の1言で、自分の家なのになぜだか小さくなって座っていた。 キッチンで洗い物をしている歩美が大きな声で言った。 「もう!やっと世話焼き係から解放されたかと思ったら、また私、世話焼き係じゃないですか!」 八木澤は最初、キョトンとしたが、その言葉を聞いて笑ってキッチンに入った。 「俺の世話、焼いてくれるの?」 歩美の手が止まり、覗き込んでいる八木澤の顔を見た。 歩美は真っ赤になりながら 「………私、世話焼き、好きなのかも……」 と、小声で言った。
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