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「………そんな上手くなってた?」
「セリフが段違い。聞き取りやすい。それから雰囲気。いつ身に付けた?人を殺せる女の雰囲気が漂ってて、マジで別人だった」
「………多分、いろんな経験したからだと思う。自分の中で知らない部分が引っ張り出されたのはなんとなくわかってたから」
「………初めて、愛花に負けたくねえって、本気で思った。愛花を食わしていけるくらいって思ってたけど、逆になりそうで焦った」
「いいんじゃないかなあ?……だって私はもう守られてるだけの女からは卒業できたと思う。いつも陸人が差しのべてくれてれ手を掴むだけの女じゃなくなったと思う。……陸人が疲れてたら私が守ってあげたいし、悩んだら手を差しのべてあげたいって思うから」
「…………本当に強くなったな。並ばれて、嬉しいけど、やっぱり男だからさ、守ってやるのは俺しかいないと思ってるからな。愛花の全部……」
「…………ありがとう」
陸人が愛花の頬を優しく撫でると、愛花のまばたきがゆっくりになり、増えた。
陸人は黙って布団をかけると、愛花は静かに目を閉じた。
「…………頑張り過ぎるなよ、………俺はいつも側に居るからな……大好きだよ」
と、愛花にキスをして、陸人は自分も布団を被り、部屋の電気を消した。
そして次の日に中森から本当に八木澤さんからのドラマの話が来てるのを聞いた。
映画が冬前までには全部撮り終わらなければならないので、映画が優先され、終わり次第にはすぐにドラマに入るらしい。
もう学校で歩美に拝み倒した。
「八木澤さんにリアルはやめてってお願いだから言ってーっ!」
「んな事言われましても、お互いに仕事には口挟まないようにしてるからなあ………それに口出したら『記者辞めて嫁になればケンカはない!』って言うしな。私はまずはちゃんと『記者・星野歩美』にはなりたいしなあ………諦めな。八木澤さんは恩人だと思ってさ」
「………歩美ちゃああん……」
「すまないねえ。今は愛花の世話焼きよりももっと大変な世話焼きしないといけない人ができたからさ」
「せめて、せめて濡れ場を少なく……涼の浮気はなくなるように……」
「拝んどこ。八木澤さん、テレビの話になると人が変わるから私が何言っても無理だからさ!」
と、歩美は笑った。
なんだか嬉しくもありつつ、憂鬱にもなった。
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